Uターン10年を振り返って、正直良かったと思えること

「このまま今の生活を続けていていいのだろうか」と、ふと立ち止まることはありませんか。仕事、子育て、老後——なんとなく不安はあるけれど、大きな決断に踏み切る勇気もない。そんな気持ちを抱えている方に、少し参考になればと思い、この記事を書きました。

私は2015年(平成27年)、30歳のときに地元の山間部へUターン移住しました。それから今年でちょうど10年。節目のタイミングなので、「結局のところ、どうだったのか」を、できるだけ正直に振り返ってみようと思います。

私はもともとSEとして働いていたので、移住前はそれなりに都市型の生活を送っていました。「田舎育ちだから戻るだけ」とはいえ、生活環境も仕事も大きく変わることへの不安は当然ありました。そのリアルな視点が、今の生活を変えようとしている方の参考になればと思っています。

暮らしのコスト、実際のところどうなの?

移住前に一番気になったのが「生活費が本当に下がるのか」という点でした。田舎暮らし=節約できる、というイメージがありますが、実際はそれほど単純ではありません。

たしかに家賃や住宅コストは大きく下がりました。都市部と同水準の家賃で、比較にならないほど広い住まいに住めています。一方で、車は必需品なので維持費はかかりますし、物価が安いかというと「そこまでではない」という感覚です。スーパーの食品は都市部とさほど変わらないことも多い。

ただ、「お金をつい使ってしまう誘惑が少ない」のは事実で、外食や娯楽への出費は自然と減りました。意識して節約しなくても、支出の構造が変わってきた、という感じです。

私の場合、一番助かっているのは両親が育てたお米や野菜を食べきれないほど分けてもらえることです。これで食費は東京に住んでいた時は月に3万(ほとんど外食だったので…)だったのが、1万5千円くらいになっている感覚があります。

一戸建てなので住宅ローンはありますが、月々の家賃を払っていた時に比べると安いですし、何よりも自分の資産として残りますので、お金の面だけではない「ゆとり」が感じられています。

子どもの環境、都会と比べて後悔はないの?

この質問は、同世代の友人によく聞かれます。「子どもが可哀想じゃない?」という言葉を、移住当初は何度か耳にしました。

正直に言うと、「これで良かった」とも「やっぱり都会の方が……」とも、どちらとも言い切れない部分があります。習い事や進学の選択肢が少ないのは事実ですし、友達の絶対数も都市部に比べれば少ない。それは否定できません。

ただ、自然の中で体を動かして育った経験、地域の大人たちと関わる機会の多さ、少人数ゆえの「顔が見える環境」——そうした部分は、都市部では得にくかっただろうとも思っています。どちらが「正解」かではなく、何を大切にするかの違いだと、10年経った今は感じています。

田舎に帰ってきて想定外だったのは、思っていたよりも近所に子供がいた、ということです。ちょうど私の住んでいる地域が子育て世代の多いサイクルだったというのもあるかもしれませんが、イメージだけで「友達が少なくて子供がかわいそう」と思うのはやめたほうが良いと思います。

仕事やキャリア、SEを辞めて後悔していないの?

これが一番、自分自身に問い続けてきたことかもしれません。移住に合わせてSEの仕事は辞め、地元で新しい仕事に就きました。収入の変化もありましたし、これまで積み上げてきたキャリアを手放す感覚は、決して小さくありませんでした。

ただ、今振り返ると「あのままSEを続けていたら」と後悔しているか、というと——そうでもないんです。当時は「失うもの」ばかりが気になっていましたが、移住後に得たものも確かにある。働き方の感覚が変わったことや、地域の中に自分の居場所ができてきたこと。数字では測りにくいけれど、それなりに実感できている充足感があります。

一方で、ITスキルは今でも日々の仕事や生活の中で活きていて、「前職の経験が無駄になった」とは感じていません。むしろ、地方では意外と重宝される場面があります。

地域のコミュニティ、馴染めなかったらどうするの?

「田舎の人間関係って濃すぎて疲れない?」という不安の声もよく聞きます。私の場合、もともと地元なので完全なアウェーではありませんでしたが、それでも「子どもの頃の自分」として見られるのとは違う立場で関わることへの難しさは、最初の数年間は感じていました。

地域の行事や自治会の活動など、都市部では経験しなかったことへの関わりが増えます。これをどう捉えるかは、正直、人によって大きく分かれると思います。私は「面倒だな」と感じる部分もありつつ、地域の顔が見えてくることで安心感や支え合いの実感も得てきました。

Uターンであれ新規移住であれ、地域との距離感をうまくつかむには、最初の1〜2年が大切だと感じています。距離を置きすぎず、かといって無理して溶け込もうとしすぎない——そのバランスを探りながら過ごしてきた、というのが正直なところです。

一番良かったのは、地域の「行政区」にきちんと入ったことです。移住したりUターンした方の中には、付き合いが面倒とかやり方や考え方が古くて嫌な気持ちになりそうといった理由から、地域のコミュニティに入りたがらない方もいます。しかし、行政区で参加し、私の場合はパソコンが得意なこともあり、公民館活動の会計係などを担いましたので、近所の方にすぐに打ち解けることができました。

郷に入っては郷に従え。ということの強みを感じた出来事でした。

まとめ:Uターン10年、「良かった」と言える理由

10年間を振り返って「移住は大正解でした!」とキレイに締めくくれると、記事としては読みやすいかもしれません。でも実際は、良かったことと、そうでなかったこと、どちらもあります。

それでも「また同じ選択をするか?」と問われたら、たぶん同じ道を選ぶと思います。コストが下がったこと、子どもが自然の中で育っていること、地域の中に自分の役割ができてきたこと——一つひとつは小さくても、積み重なると「これが自分の暮らしだ」と感じられる土台になっています。

移住を考えている方に伝えたいのは、「正解を探さなくていい」ということです。どんな選択にも一長一短があって、暮らしてみないとわからないことが大半です。ただ、10年という時間をかけて少しずつ根を張っていく感覚は、悪くないですよ。